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「良いデザイン」を考える手がかり
雑貨デザインに限らず、デザイン(プロダクトデザイン)とは「形状を考え出すこと」です。
そのデザインが「良い」か「悪い」かの判定は、最終的に消費者がすることですが、少なくとも一定の数の消費者にとって「良いデザイン」として認識されないと、商業的には成り立ちません。プロダクトデザインにとっては商業的に成り立つかどうかもデザインの構成要素です。
そこで、より多くの消費者が「良いデザイン」だと考えるようなデザインをデザイナーは考え続けます。しかし、デザインの手がかりをどこに見出すか?は歴史的に「類推(アナロジー)」の枠として考えられてきました。
それは機能的類推、有機的類推、道徳的類推です。
機能的類推とは、ものが技術的に成り立っているのであれば、その技術的な機能がデザインの基本的な枠を決めてしまうという考え方です。
このアナロジーに従えば、技術を追究すれば、自ずとデザインはつむぎだされるということになります。
例えば、新幹線は速度を極限まで上げることを目的に技術開発され、その目的にかなう技術を最適に備えるためにデザインも決まると考えます。
ですから、流線型のかたちになり、その流線型のかたちも科学的に分析され、最も空気抵抗の少ない流線型を追究していくことでデザインが決まるということです。
有機的類推とは、有機体(生命体)にデザインの基本はすべて備わっているという考え方です。
人間や動物、植物などの有機体のかたちは「神が創った」ものという言説もありますが、進化の中で必要に迫られ、または多様性を保つために様々なかたちにたどりついたものです。そこにはあらゆるパターン、思想があると考えるわけです。
これは実に妥当な意見で、その意味で言えば、有機体というよりも自然すべてがデザインの基本的なパターン、思想を持っているといえるかもしれません。
道徳的類推とは、人間は社会的に好ましい行動やあり方をするべきで、デザインもそのために役立つものになる必要があるという考え方です。
道徳や倫理とは文化・慣習や宗教と関わることなので、それぞれの文化圏にそれぞれ好ましいデザインがあるということです。先住民の部族の習俗は多種多様ですが、それらはすべて環境に適したものであるとともに、それぞれの部族の文化、宗教に適したものになっているわけです。
その社会で「最適」と判断されたかたちが生き残ってきたのですから、文化的な進化を経たデザインです。
この考え方を発展させると、「カウンターカルチャー」も道徳的類推の範疇に入ると考えられます。社会が「正当だ」と判断するデザイン(ファッション)を意識して、あえて「好ましくないかたち」で表現するのですから、道徳的類推を手がかりにデザインをつむぎだしたといえるのです。
このように考えると、「このデザインの手がかりは何か?」と考える、デザインを鑑賞するときの楽しみも増えるかもしれません。