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カスタマイズすること

自分好みに色やデザインをカスタマイズできる「tagger(タガー)」のメッセンジャーバッグは、持っている人もかなり多いです。

このTaggerは、ありそうでなかったバッグの簡単カスタマイズを実現しています。

Taggerの巧みなところは、バッグの本体ともいえる袋部分「bag」、かぶせるふたの部分「flap」、ベルト部分「strap」の4つの部分を組み合わせてカスタマイズできるのです。オリジナルバッグを承っているお店はよくありますが、やはり敷居が高いものです。

オートクチュール的な雰囲気があり、若者が気軽にオリジナルバッグをという気分にはなれませんでした。Taggerはそんな敷居を低くすることができました。

簡単に、「カスタマイズできる」といっても、マーケットに受け入れてもらえるカスタマイズというのは、なかなか難しいものです。Taggerは4つの部分を自由に組み合わせることができるのですが、このようなカスタマイズするための選択肢や組み合わせの方法を「システム」と名付けて考えてみましょう。

※tagger(http://www.taggerbags.jp/

Taggerのシステムはシンプルで、4つの部品の構造が分かれば、自分の好みのバッグにするには、どの部品を選べばいいか?が明確にわかります。

TAGGER

世の中には、いろいろと「カスタマイズできる」ことを売りにした商品やサービスがあります。このカスタマイズ可能というシステムこそがデザインなのですが、カスタマイズ・システムをどのようにデザインしたのかによって、マーケットで受けるかどうかが決まるのです。

よくあるのが、「カスタマイズはできるが、システムが複雑で、よく説明してもらわないとわからない」というようなシステムのデザインです。これはカスタマイズできるという売りが意味を失ってしまいます。結局はお店がお勧めする組み合わせになってしまうので、「あなたの好きな組み合わせ」を提供できないのです。

また、システムは簡単で、どれを選べば、自分好みのデザインにカスタマイズできるということはわかるのですが、選べる選択肢が少なかったり、消費者が好む選択肢を提供できないような場合です。

せっかくカスタマイズのシステムが明確で、消費者が自由にカスタマイズできるチャンスを提供できているにもかかわらず、選択肢が少ない、消費者が好みそうな選択肢を提供できないということでは、たぶん売れないでしょう。

このように考えると、「カスタマイズできる」という価値を提供する時には、「システムが明瞭」であるとともに、「選択肢がたくさん」あり、「選択肢のラインナップも十分にマーケティングする必要がある」ということです。

「消費者の嗜好が多様化している」という表現は、もう陳腐に思えるほど言いつくされてきました。しかし、カスタマイズできるものは、それほど広がっているとはいえないでしょう。

反対に、ユニクロや無印良品のように「スタンダード」を志向するブランドが広く受け入れられています。これは、自分らしいものと、どうでもいいものにメリハリをつけているから、スタンダードな商品も必要なのだという解釈もできます。

「カスタマイズは面倒」という消費者の回答なのか、それとも「カスタマイズ商品の可能性はまだまだある」という信号なのか、意見は分かれるでしょう。しかし、「人が持っていないものを持ちたい」というニーズは必ずあります。

デザインの可能性として、「カスタマイズのシステム」をデザインするということもチャレンジの一つとして大切な視点でしょう。